「子ぐまのポン」


「小ぐまのポン」

ここは、どんぐり村。 お空には、白い雲がぷーかぷか 浮かんでいます。
野原には、たんぽぽや春の花たちが いっぱい咲いています。
おや、野原ででんぐり返しをして 遊んでいる子ぐまさんがいます。
名前はポンといいます。

ポンは、まだ小さいけど とっても元気なくまの男の子です。
目はくりっくりっとしています。
半袖のシャツと 半ズボンをはいています。
ごろんごろん転がって、とっても楽しそうです。
時々、チョウチョウを追いかけて遊んでいます。
遊び疲れたのか、ポンは野原に寝ころびました。
ぷーんと草のいいにおいがします。
お花の甘い香りもします。
お日さまがぽかぽかとして とてもいい気持ちです。
ポンは本当は、散髪やへ行く途中だったのです。
だけど散髪がきらいなものだから、道草をしていたのです。
でも、もうそろそろ行かなくてはなりません。

小くまのポン
童話『小くまのポン』の男の子

「ふー」 とためいきをつくと、ポンは起きあがりました。
そして、草の上に置いておいた 白い帽子をとりました。
ポンのお気に入りの帽子です。 去年、お誕生日に買ってもらったのです。
ちょっと小さくなって、すっぽりとは頭にはいりませんが。
頭の上にちょこんとのせました。
さて、ポンはしぶしぶ、散髪やさんへ行きました。そして、中にはいりました。
中には、いすに座って 新聞を読んでいるカニさんがいます。
そうです。カニさんが、散髪やさんなのです。

「おじちゃん。やって!」 ポンは、元気に言いました。
カニさんは、ポンを見ると、 「ずいぶん、伸びたなー。」と言いました。
ポンの頭は、ボサボサでした。
帽子をぬいで、 ポンは、いすに座ります。
カニさんが、エプロンをかけてくれます。
カニさんは、ポンの頭の上にのぼりました。

ポンの頭の上にのったカニさん

二つのハサミで、チョキチョキ髪をきっていきます。
なんだか くすぐったい気がします。
「くっくっく・・・」 ポンは、体を震わせて、笑いました。
するとカニさんは、ポンの頭の上から、すべり落ちてしまいました。

「いい子だから、じっとしていて。」 そう言うと、カニさんは、またポンの頭にのぼりました。
チョキ、チョキ、チョキ。 鏡にうつるポンの髪が、どんどん短くなっていきます。
ポンはがまんをして、じっとしています。
カニさんも、一生懸命に早く 切っています。
また下に落ちては たまりませんから。
ボーン、ボーン、ボーン  時計が三回なりました。
「おやつの時間だ!」 ポンは、時計の方をふりむきました。

するとカニさんは、また頭の上から落ちてしまいました。
「いたたた・・・
カニさんは、腰を打ってしまいました。
「たのむから、じっとしていて。」
少し怒っているような 赤い顔をして言いました。
ポンは、だから散髪がきらいなのです。じっとしているのが、にがてなのです。
そして実はカニさんも、ポンの髪を切るのが 嫌いなのでした。
いつもこの調子なのですから。

やっと、散髪が終わりました。
ポンは、ふあーっと、あくびをしました。
カニさんは、「やれやれ」と言いました。
ポケットから、お母さんからもらったドングリ5個を出し、カニさんに渡しました。
ここのどんぐり村では、ドングリがお金のかわりなのです。

「どうもありがとう。」
とポンが言うと、カニさんも
「また、うーんと伸びてから、おいで。」と言いました。
ポンはにっこりうなずいて、帽子をかぶりました。
散髪に来るまえは、小さくて、頭に入らなかった帽子です。
今はポンの頭に、すっぽりはいっています。
ポンは、スキップをして、家へ帰りました。
(おわり)白鳥鈴奈作

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20年以上前に作った童話です。


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